大丸神戸店クリスマス周年記念2017 ─ 光と記憶で“街の場”を編み直すプレースメーキング ─

光が“通り”を場所に変えた夜  Placemaking as an art of relation.

大丸神戸店 クリスマスライティングプロジェクト 2017

街の呼吸を取り戻す

旧居留地の街並み。
冬の夜、ルミナリエが開催される間、多くの光が瞬くこのエリアは、大丸という普段はこのエリアを代表するブランドがこの時期には少し霞んでしまった“通り抜ける風景”になっていました。
その流れの中で、百貨店のファサードも、ただの背景のひとつに埋もれていたのです。

——通り過ぎる場所を、立ち止まる場所へ。
私たちはルミナリエにおいて、百貨店を「街と人が再び結ばれる場」をめざしました。

光の記憶回路

テーマは「光の記憶回路」。
イギリスの切り絵アーティスト、ロブ・ライアンの作品を中心に据え、
彼の切り絵が語る“人々のクリスマスの物語”を建築空間に展開しようと考えました。
彼の切り絵のメッセージを展開し、ルミナリエと大丸、大丸と神戸の人々の関係を結び直すアニメーションに展開しようと考えました。

ロブ・ライアンの切り絵は、
愛する人への想い、祈り、別れ、再会といった人の内なる物語を、紙のレイヤーで織り上げたものです。
その詩的な世界を、私たちは空間へと翻訳するため、
トアロードエントランスに3m×8mのスリッド型LEDサイネージを設置。
そこに、彼の切り絵から生まれたアニメーションを投影しました。

エントランスのアールのついたウインドウにLEDのスリッド構造が、まるで“紙の繊維”のように光を透かし、
風に揺れるような映像の呼吸を生み出す。
通りを歩く人の視線と呼吸に呼応するような“動的なファサード”をつくり出しました。

ストーリーを「街に解き放つ」

このアニメーションは、さらにARコンテンツとして拡張されました。
ショッパーやウィンドウに仕込まれたARマーカーを読み取ると、
ロブ・ライアンの登場人物たちが現れ、
彼の物語が目の前で漂うような体験が生まれました。

アニメーションとARが呼応し合い、
建築の外壁から街路、そして人の手の中へと物語が拡散する。
それはまさに**「アートを場にする」プレースメーキングの実践**でした。
ロブの作品世界が神戸の冬の街に重なり、
「この光の下で誰かを想う」という静かな共感が、街全体に広がっていったのです。

プレースメーキングの構成法

このプロジェクトでは、演出を超えて“場の構成”を意識しました。
アート、建築、照明、動線、風、人。
それらの関係を再編集し、
**建築そのものを媒体とした“関係の装置”**へと転化。

プレースメーキングとは、空間を飾ることではなく、
人と場所の関係性を再び結ばれる行為。
百貨店のファサードは、広告の媒体から、
街の感情を映すメディアへと生まれ変わりました。

結果と余韻

このクリスマス、
トアロードを歩く人々が立ち止まり、静かに空を見上げる光景が生まれました。
SNSには「この光の下で誰かを思い出した」「またこの場所に来たい」という声が溢れ、
街と百貨店が“共に呼吸する関係”が回復していったのです。

ロブ・ライアンの切り絵の物語が、
神戸という街の記憶に溶け込み、
再び人々の心の中で灯をともす。
その瞬間、プレースメーキングはアートを超えて——街の詩になりました。

 

 

 


夜間のみ外壁に施されたAR

 

 

 

 

ウィンドウに飾られたロブライアン氏の切り絵の絵本。表紙がARトリガーキーのなっていて絵本の表紙のグラフィックがアニメーションで動き出します。

クリスマス限定ショッパー このショッパーにも ARが施され、スマホをかざすとロブライアン氏の切り絵のイラストのアニメーションが動き出します。

 

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